U-18高円宮杯(9/18, 9/20)

札幌ラウンドを終えて1分1敗の勝ち点1で迎えたグループCの最終戦。勝利でグループ突破、引き分け以下で敗退という分かりやすい状況でキックオフとなった愛媛FC戦は、最終スコアの印象とは異なる厳しいゲームとなった。

開始4分にCKの跳ね返りを収めた雅斗が、ペナエリア左外から強烈ミドル。愛媛GKがこぼしたところに舜司が詰めて先制点の奪取に成功する。しかし、直後の9分に左サイドへの大きな展開から、折り返しをファーでフリーで合わせられ同点とされてしまう。ボールサイドにディフェンスが偏りがちな傾向はこれまでも散見されたが、それが失点として浮き彫りになってしまった。

その後は最終ラインからのビルドアップを試みるものの、アタッキングサード付近で手詰まりとなり愛媛のカウンターに晒される展開が続く。小気味良いショートパスのビルドアップに、金村と近藤の強力な2トップが絡んで緊迫した場面を作り出す。愛媛FCとはJユースや高円宮杯で3年連続で対戦している中で、中3の頃からU-18の舞台で圧倒的な存在感を見せつけてきた近藤寛太が、この日もセレッソのディフェンスラインを脅かす。小気味良いドリブル突破に状況判断の良さも加わって、ピッチ上でもっとも存在感を放った。これからどこまで伸びるかは分からないが、未来の香川真司にもなり得る愛媛FCの至宝だと思う。大事に育ててあげてください。

対するセレッソは、パスワークの微妙なズレが攻守のリズムに影響すると、サポート・フォローの動きやチェイシングからも少しずつ躍動感が失われていく。前半は、今年観た中ではもっとも厳しいと感じられてしまうパフォーマンスに終始。グループ突破への緊張感か札幌遠征が2週連続で続いた疲労のためかは定かではないが、選手達の焦燥感がスタンドにも伝わってくるような内容だった*1

グループ突破に向けた勝ち越し点がどうしても必要な後半、思わぬ形で試合が動く。愛媛FCの金村が2枚目のイエローで退場となって、愛媛は前線のターゲットを失う。その後はセレッソがポゼッションの割合を上げて愛媛陣内へと攻め込むものの、フィニッシュまで崩しきれないもどかしい展開が続く。逆に、愛媛1トップの近藤寛太にカウンターから危険な場面を作られる展開もあった。しかし、選手交代によって近藤が2列目に下がると危険なシーンは少なくなり、セレッソが1点取れるかドローで終わるかという展開に。

そして試合が動いたのは後半35分。雅斗との交代で右SBに入った潤弥の右クロスに逆サイドの小暮が反応。左足インサイドで流し込もうとしたボールを、勢いの止まらなかった愛媛DFが触って遂に勝ち越しに成功。場内アナウンスは愛媛のオウンゴールだったが、公式記録では小暮のゴール。これで肩の荷が下りたのか、終盤に来て躍動感の生まれたセレッソ愛媛FCを圧倒し始める。

後半38分には潤弥が鋭い出足から最終ラインのビルドアップをインターセプト。パスを受けた拓実がペナエリア外から豪快なミドルを叩き込むと、直後の後半40分には野口のクロスを愛媛GKがこぼしたところに大地が詰めて4-1。最後は拓実の突破からファーで待ち受けた小暮が丁寧に流し込んで5-1として試合終了。終盤までの苦しい展開からはかけ離れた結果でグループリーグ突破を決めた。

恐らく数年前であれば自分たちも無邪気に勝利を喜び合っていたと思うが、この日は喜びながらもちょっと苦言?が出たかな。ただそれも、もっと成長してほしいからだし、U-18で終わりではなくトップでも1人でも多くの選手の活躍を観たいと思うからだということを分かってもらえると嬉しい。過去よりも高い要求は、全てそれ相応の期待があるからなのでね...

愛媛戦の勝利によって、勝ち点4の得失点差+3を獲得。グループCを3位で、そして3位集団の1位となったセレッソは、ラウンド16を西が丘で、そして対戦相手は一発勝負の相手としては最も難敵といえる広島ユースとなった。


西が丘での広島戦は、奇しくも2年前の浦和戦を思い起こさせるような試合となってしまった。ただ、この試合は愛媛FC戦とは逆で、最終スコアの印象とは異なり試合の入りは良かった。守備ブロックを形成する広島相手にポゼッションを高めると、フィニッシュに至る回数は数えるほどだったものの、攻撃時のバランスや選手間の距離感は悪くないように感じられた。

しかし、ワンプレーから広島に先制を許してしまったことで、試合は期待とは異なる方向に動き始めてしまう。左サイドをドリブルで縦に突破されてクロスを上げられると、ファーに飛び込んだ選手がフリーとなりゴールを許してしまう。この広島の先制点は崩されたという印象はなく、左の突破に対してあと半歩厳しく入っていれば、もしくは愛媛戦の反省からファーが多少なりともケアできていれば、危なげなく防げた失点だったのかもしれない。しかし、重要な試合となればなるほど、ディテールによって試合は動く。決して望んだわけではないが、土曜のトップチームと同じ経験をしてしまったかのような展開に。

そして前掛かりとなったセレッソに対して、更なる試練が襲う。セレッソのCKの跳ね返りを広島に収められると、カウンターからライン裏を一発で奪われ、鶴ちゃんとの1対1から冷静にゴールへと流し込まれてしまう。前半25分で0-2となったものの、トーナメントということを考えると、残り時間でとりあえず追いつけば良い。勝ち点3が必須という状況にあるリーグ戦に較べれば、慌てる要素は少ない。前半で1点返すことができれば、気分的にはドローに近い感覚で後半を迎えられると考えていたのだが、試合は更に厳しいものに。

前半終了間際、セレッソのCKの跳ね返りを収めてカウンターに入ろうとする広島の選手に対して、慶太のスライディングが後方から入る。駆け寄る主審が迷わず提示したイエローは、慶太にとってこの日2枚目。痛恨の退場となってしまう。2点ビハインドで1人少ない状況。こんな形でトップと同じ状況を経験したくは無かった...

それでも勝ち上がりだけを考えるトーナメントでは、前へ前へと積極的に行くしかない状況。1人少ない状況で前線からプレッシャーをかけ続けるセレッソ大阪U-18。2人で中盤を担った凌輔と大地は、機を観て積極的に前線へもプレッシャーを仕掛けに行く。その分空いたスペースを広島に有効活用されながらも耐え続けたが、後半10分に3点目、後半16分に決定的となる4点目を奪われると、後半23分、31分と立て続けに失点を許して6-0と大きく水をあけられてしまう。

しかし、セレッソの選手達が戦意を失ったわけではなかった。失点を重ねながらも下を向かず、ただひたすらにゴールを目指し続けた後半の45分。この試合唯一のゴールは広島DF陣のパスミスから。しかし、セレッソ攻撃陣の諦めないチェイシングが生んだゴールだった。広島のパスミスの始まりは拓実のGKへのチェイシングから。最終ラインやGKへのチェイシングは、普段から行われているプレーのひとつだろう。しかし、このときの拓実のチェイシングは、ありがちな「何となく追う」体のアリバイプレーではなく、「奪ってやる!」という気概が眼前の自分達にも強烈に感じられるものだった。

ペナエリア内右でパスミスを奪った凌輔はルックアップしてエリア中央外へと流すと、ここに飛び込んできた大地が豪快に叩き込んで意地の1点を返す。一般の観客にとっては大して意味を持たないかもしれないゴール。しかし、セレッソの選手達にとっては、捉えかたひとつでこの1ゴールを大きな意味のあるものにすることができる。この大敗を、そしてこの1点を、Jユースへ、そして個々の選手達の未来へ繋げていってほしい。

今年のチームには、突出したタレントを持つ選手は少ない。タカのような世代屈指の展開力もなければ龍のような生粋の点取り屋もいない。隼人のようなスピードスターはおらず、健勇という稀代のフィジカルモンスターも既にユースを卒業してしまった。

だからといって、今年のチームや選手達が過去のチームやOBより劣っているとは思わない。今年の最終ラインから細かく繋ぐサッカーは、トーナメントや一発勝負という意味では決して有利ではないかもしれない。それでも、しっかり繋いで高い技術と状況判断を養い、更に個人の意思で仕掛けることのできる今年のサッカーは、選手達にとって大きな成長のチャンスとなり得るものだと思う。それだけに、仮に結果が伴わずとも今年のU-18のサッカーは観ている側としても好印象を受けている。Jユースでは、チームとしても個々の選手としても、更に昇華したサッカーをみせてくれることを強く期待しています。

悔しさを真正面から受け止めて、そして乗り越えていけばもっともっと強く、逞しくなれる。ピッチで戦った選手もベンチから見届けた選手も、そして遠征に帯同できなかった選手達でさえも、今大会の経験を糧としてより大きく成長していってくれることを期待しています。

高円宮杯、お疲れさまでした。そしてJユースでも頑張れ!セレッソ大阪U-18の選手達!!

*1:以前OBに聞いた話では、遠征で前日入りだと身体が動かないことが多いらしい。このため、クラ選など夏休みに行われる大会では、前々日に現地に入るとのことだった(今は違うかもしれないが)。学期中に行われる高円宮杯の難しさはこういうところにもあるのだろう。来年から全国リーグが始まって、質の高い練習と試合が積み上げられるはずの土日に、長距離移動によって選手達が疲弊していくことがないかちょっとだけ心配です。