高円宮杯準決勝 三菱養和SCユース vs FC東京U-18

体調不良のため、遅れて国立に到着したのは第1試合の後半20分頃。移動中に携帯で見た途中経過は0-2で静学リードだったが、現地に着くと広島と静学の双方とも1人ずつ退場者を出しており、そしてスコアは2-2と広島が追いついていた。

状況を確認するために電光掲示板へ改めて目を向けていると逆サイドで歓声が、そして自分のいたホーム側からは大きな悲鳴が上がる。ピッチへと目を戻すと逆転ゴールとともに広島の選手たちが歓喜の輪を作っている。砂川のハットトリックで広島が逆転に成功。対する静学も前掛かりとなって再び同点ゴールを目指し、何度か惜しい場面を作った。しかし、終盤に手薄となった守備陣の虚を突かれ、4-2と突き放されて万事休す。埼玉スタジアムへの最初の切符を掴んだのは、3年前の決勝戦のリベンジを誓う広島ユースとなった。

第2試合は、残る1枚の切符を賭けた東京ダービー。街クラブの雄三菱養和SCユースと、FC東京U-18の一戦。同じ関東のチームでありながら、昨年や今年のクラ選など、全国の舞台でも数多くの対戦がある因縁の対決となった。


三菱養和SCユース (2010高円宮杯準決勝) のフォーメーション

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FC東京U-18 (2010高円宮杯準決勝) のフォーメーション

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養和は怪我明けとなった世代別代表の田鍋を温存。試合の流れの中では2ボランチは内藤が後ろ、川崎が前という明確な役割ができているように見えた。また前線は、夏のJヴィレッジでは若狭の1トップに近藤がトップ下のような位置取りにも見えたが、この日は横の関係に近い2トップとなっていた。

対するFC東京は、武藤の累積に加えて大学受験のため主力の数人が欠場。この中で、倉又監督が本来ボランチの佐々木をFWで起用したことには驚かされた。縦への速い展開が持ち味のチームとはいえ、佐々木の配球がFC東京の攻撃のベースと思っていたので。しかしこの日は、ボランチに入った野沢の的確な配球によって試合はきっちりコントロールされていた。FC東京の選手層の厚さには、ただただ驚かされるばかりで...

立ち上がりこそ養和が積極的に仕掛けるものの、今大会無失点のFC東京のDF陣を崩し切るには至らない。FC東京は養和の縦へのアクション、特に若狭への楔のパスを松藤と小林の両CBが封じる。そして、FC東京の最大の特徴ともいえるハイプレスでペースを握ると、次第に養和陣内で試合が展開される時間が増えていく。

FC東京は2トップへの縦へのアクションから、岩木、岩田の2列目の2人が絡んでワンタッチ、ツータッチの小気味良い展開が続く。養和としては完全に崩されるまでには至らなかったが、この時間帯を凌ぎ切れるか否かがひとつのターニングポイントだったかもしれない。しかし前半22分、FC東京の左からのアーリークロスが跳ね返り、ペナエリア内左で岩木が収める。そして角度の無いところから放ったシュートがGKのニアを抜いて、FC東京が先制点の奪取に成功する。養和としては完全に崩されたわけではなかったが、DFがボールホルダーに詰め切れず、一瞬足を止めた隙を突かれる格好となった。

対する養和も、失点後は攻勢に出て攻撃のリズムを作る場面が出始めた。FWの近藤と右MFの佐藤の連携を中心として、こちらもダイレクトを織り交ぜた小気味よい展開でリズムを作る。特に近藤は持ち前の瞬発力に加えて、状況判断の速さと展開や仕掛けの選択の良さなどセンスを感じさせる選手。ヴェルディの山浦とかもそうだが、個人的にはこういう選手達がもっと評価されて、世代別代表などに呼ばれても良いような気がするのだが...

前半を0-1とFC東京のリードで終了して迎えた後半、養和は田中輝に代えて田鍋を投入。佐藤が左に移動して田鍋は右の2列目に入る。この交代で攻撃時の左右のバランスが改善されつつあった養和だったが、ひとつのプレーで試合は大きく動く。後半15分、ロングフィードに抜け出した東京の選手と養和のSB川田が並走し、ペナエリア内で交錯して2人とも倒れたところに主審のホイッスル。PKスポットを指しながらファール地点に駆け寄り、躊躇なく提示されたイエローは川田にとってこの日2枚目。FC東京にとっては貴重なPK獲得、対する養和にとっては退場で1人少なくなるという厳しい状況に追い込まれた。

このプレー以前においても、この日は養和の選手が遅れ気味に対応してファールという場面が散見されたのは事実。それでも、いち観戦者としてはこの判定でせっかくの好ゲームが壊れてしまうと思うと、主審はもうちょっとコントロールできなかったかな...と残念に感じてしまった*1。このPKを秋岡がきっちりと決めて0-2とすると、2分後の後半17分にこの日はFWで出場した佐々木がペナエリア左から放ったコントロールショットが逆サイドのネットを揺らして0-3となり、一気に養和を引き離す。

それでも気持ちの切れなかった養和は、直後のプレーで近藤が中央から右へとFC東京DFラインを突破してペナエリアに侵入。後ろから引っ掛けられてPKを獲得すると、これを自らが決めて1点を返す。センターサークルへ走ってボールをセットしてスタンドを両手で呷ると、スタジアムは再びヒートアップ。1人多いFC東京のカウンターに晒されながらも、ゴールを目指して前へと圧力をかけ続けていく養和という時間帯が続く。

しかし、近藤のミドルや若狭のヘッドなど惜しい場面が何度かあったものの、最後はFC東京が危なげなく試合をクローズ。今大会での初失点を喫したものの、1-3で養和を下してFC東京埼玉スタジアムへの切符を手にした(公式記録はこちら)。

10月11日の決勝戦サンフレッチェ広島ユース vs FC東京U-18。今年のクラ選、グループリーグ最終節の前に、広島の森山監督が「F東を引きずり下ろす」と宣言し、大会の名勝負とも言われた一戦の再戦となった*2。昨年、一昨年のファイナルは一方的なスコアとなってしまったが、今年は現行方式では最後となる高円宮杯の締めくくりにふさわしい、歴史に残る好ゲームが繰り広げられることを期待したい。

*1:ちなみにこの日の主審は、養和にとって昨年の準決勝と同じ主審だった。相性とかもあるだろうし、協会の配慮があっても良かったのでは...

*2:個人的には京都vs養和に行っていたので、観ていないんですけどね...