クラブユース選手権 vs 大分トリニータU-18 @Jヴィレッジ Adidas Pitch

今年も熱く、そして一週間という僅かな時間で駆け抜ける夏がやって来た。Adidas CUP 2010 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会。グループE初戦の対戦相手は、これまでに多くの好選手を輩出してきた大分トリニータU-18セレッソに関わる人であれば、大分U-18の最高傑作にして現在トップチーム所属の清武を見れば、大分の選手育成の素晴らしさが分かるというものだろう。

大分は、昨年のU-17W杯代表メンバー松原健がトップ帯同のため不在。しかし、攻守の切り替え、特にカウンターからの縦への速い展開が印象的な好チームだった。


セレッソ大阪U-18 (2010クラ選 vs 大分U-18) のフォーメーション

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怪我のためU-17代表は辞退したものの今大会に間に合った大地をボランチに抜擢して、これまでボランチを主戦場としていたキャプテンの凌輔を左SBに配置。また、これまで左SBを主戦場としていた野口は右SBに移動。CBには開幕から不動となっている堀尾と佑平の二人が構え、守護神の翔が最後の砦となってセレッソゴールを守る。そしてトップ昇格によって健勇の抜けた前線は、舜司・ケンジ・拓実・西村兄弟の5人を軸として、その日のコンディションや戦術に応じて4人がスタメンに並ぶ。

大会初日は、その日最後の試合となる第3試合の15時キックオフ。グループリーグの形式をとっているものの、1つの敗戦が即敗退につながりかねないレギュレーションのためか、第1・第2試合では慎重に試合に入るチームが多いという印象が残った。しかし、この日のセレッソ大阪U-18は、プリンスリーグ同様に積極的な出足とともに試合に入っていく。序盤は優勢に試合を進められていると思った前半8分、大分に早くも選手交代のボードが掲げられる。その時点では分からなかったが、大分は本来スタメンであったはずの選手が自身のユニフォーム不携帯のため出場できず、最初の8分を10人で戦っていたらしい...

11人になったことでバランスが保たれたのか、試合は次第に一進一退の攻防へと移行。ボールポゼッションはセレッソだったが、カウンターからCBと相手FWが数的同数となる形やサイドの裏のスペースを突かれる場面も多く、試合展開としては出入りの激しい、一進一退の攻防が続く。セレッソにおいて昨年のサッカーと大きく異なる点は、ボランチが前を向いてテンポ良くゲームを組み立てていくところ。昨年は中盤を省略してボールを運ぶ場面が多かった。しかし今年は慶太がボールを受けるとターンして前を向く意識が強い。センターからの長短織り交ぜた配給を起点に相手DFを崩しにかかる場面が多く、観ている側としては興味深い内容。一方で、ともすればボール運びを前へと急ぐあまり一本調子になってしまうという懸念もあるが、この点はチームとして、選手間の連携の中で改善していけるポイントだろう。

ディフェンスでは上述の通り危ない場面も散見されたが、堀尾と佑平のチャレンジ&カバー、翔の的確な裏のスペースのケア、そして少しの運の良さも相俟って前半は無失点で対応。両SBの攻撃参加とカバーリングの意識のバランスなのか、それとも前掛かりになったもののボールを取られるポイントが良くないのかは分からないが、観ている側にも緊張を強いられる場面が眼前で何度か繰り広げられた。

しかし、攻守両面でアグレッシブな今年のチームの戦い方は、個人的には好印象。拓実や洋亮、そしてケンジと舜司といった前線の選手達もアグレッシブなディフェンスで対応。スペースを消しに回るような受けのディフェンスではなく、積極的にボールホルダーにアプローチし、またインターセプトを狙いに行く姿勢の強さも今年のチームの特徴のひとつ。そしてマイボールとなれば、ボランチの2人、特に大地が前線へのスペースへと飛び出し、SBの2人も高い位置取りから積極的に攻撃に絡んでいく。

待望の先制点は前半33分。右サイドに開いた野口の放ったアーリークロスが相手GKの頭上を越え、相手GKが僅かに触ったもののボールはそのままゴールへと吸い込まれる。ラッキーな先制点で試合の主導権を握り、1-0として前半を終了した。

そして10分間のハーフタイムののちに後半開始...と思ったら、落雷の影響を懸念した主催者側の判断により試合は中断。選手、観客ともにJヴィレッジ建物内に移動して試合の再開を待つ。選手たちは屋根のあるグラウンドでコンディション調整をしていたようだが、再開時間が分からない中での準備は難しかっただろう。結局、中断からおよそ1時間半後の17時半に試合は再開された。

後半も前半と同様の一進一退の攻防が続くが、1点ビハインドの大分の積極的な仕掛けに対して受けに回る場面が次第に増え始める。セレッソベンチはスピードのある突破に特徴のある小暮を投入して、再びサイドで主導権を奪いにいく。大分のプレッシャーに対して押し込まれ始めた時間帯、チームにとって大きなピンチが訪れる。大地の素晴らしいスライディングによるディフェンスで難を逃れたと思った瞬間、主審のホイッスルが鳴り何とPKの判定。逆サイドのプレーで分かりにくかったが、ボールに対して行っているプレーでPKはないだろう...しかし、この絶体絶命のピンチも、終始落ち着いた対応をみせていた翔が絶妙のPKストップでチームを救う。勝ち点3を強烈に意識することのできる、ビッグプレーに鳥肌が立った。

その後は、一進一退ながらも再び勢いを取り戻し始めたセレッソだが、舜司の巧みな抜け出しから放たれたシュートが僅かにゴール右へと逸れるなど、何度か訪れたチャンスを得点に結びつけることができない。そして終盤には、1年生ながらポストプレーとボールキープに長けた長谷川将を前線に据える。


セレッソ大阪U-18 (2010クラ選 vs 大分U-18) のフォーメーション

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勝ち点3が見え始めた後半ロスタイム。大分のFKから放たれたボールは、シュータリングとなった野口のクロスと似たような軌道を描く。翔は辛うじてパンチアウトしたものの、そのこぼれ球をヘッドで押し込まれ同点とされてしまう。セレッソの選手達も残り時間で攻勢を仕掛けたが、試合は1-1のまま終了。大分と勝ち点1を分け合う形での大会スタートとなった。

失点の時間帯からすれば当然悔しいドローということになるのだが、互いに似たような形からの失点、そして互いに崩し切っての得点がなかったという意味では、妥当な結果ともいえるのだろう。短期集中の大会だからこそ、次の試合に切り替えて臨めるかが大事となってくる。グループ突破に向けて、2日目以降もセレッソらしい躍動感溢れるサッカーが展開されることを期待したい。