高円宮杯グループC vs 愛媛FCユース @ひたちなか市総合運動公園陸上競技場

U-18世代最強を決める舞台、高円宮杯 第20回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会。昨年同様、ひたちなかの地から決勝の埼玉スタジアム2002を目指した戦いが始まる。クラブユース選手権の王者として注目を集めてはいるものの、挑戦者として、新たな気持ちで一戦一戦に挑んでいってほしいと思う。


 GK: 一森
 DF: 野口、杉本(→南野)、夛田、坂手
 MF: 道上、秋山(→坂口)、扇原[CAP]、細見
 FW: 長谷川(→成田)、永井


ピッチに選手達が表れたときに「U-15の選手が何人か帯同してる...?」と思ったが、スターティングメンバーの場内アナウンスでその認識は驚きに変わる。西U-15の坂手優雅と長谷川将、そして津守U-15の秋山大地をスタメンに抜擢。更にU-15クラ選の大会得点王、南野拓実はベンチスタート。全国大会の初戦で大胆な手を打ってきたなと思う一方、U-15の公式戦でクオリティの高さを実証していた選手達だけに、不安よりも「面白いかも」という期待の方が大きくなった。

開始早々、このU-15世代の選手達が積極的なプレーからチャンスを作り出す。野口と隼人に長谷川と大地が絡んでワンタッチで崩し、右サイドのスペースを切り崩してチャンスを演出。その直後の前半3分には、同じような形から野口が右サイドを突破して上げたクロスがファーサイドに流れると、この日は2列目の左からスタートした細見が高い打点のヘッドを合わせて先制点の奪取に成功。西U-15の頃から観ているが、細見のヘディングによるゴールを観たのは多分初めてだと思う。

その後も、U-15カテゴリの選手達は上手く個性を表現してチームにプラスの効果を与えた。長谷川は懐の深いポストプレーで前線にボールを収め、攻撃の基点となった。プレー時の姿勢の良さが特徴的で視野も広く、ニアへのクロスをヒールで中央の龍に流す場面など、カテゴリーアップしても西U-15の試合と変わらず落ち着いてプレーできていた。

坂手は西U-15では主にCBを努めていたが、この日は左SBとして出場。2列目の選手が引いてフリーでボールを受けると、躊躇いなく裏へのスペースへとオーバーラップを仕掛ける。芳賀監督の実践する西U-15のサッカーでは当たり前の動きなのだろうが、その積極果敢なプレーが攻撃に厚みをもたらした。また、90分を闘い切ったのも大きな経験だろう。

大地はボランチからスタートしたが、試合途中からはU-15クラ選と同じ2列目でプレー。序盤は積極的にボールサイドに顔を出してビルドアップに上手く絡んだ。中央の位置で安全にこなすのではなく、前線のスペースに積極的に仕掛けていく場面も見られた。イエローを貰ったこともあって前半での交代となったが、U-18でも充分通用することは示せたと思う。

彼らが純粋に戦力として通用したことは、他のU-15カテゴリの選手達にも、そして現U-18の選手達にとっても、様々な意味で刺激になったのではないかと思う。多くの選手がこの刺激をポジティブに捉えて、自らの成長に繋げていってくれることを期待したい。

序盤に先制した後もしばらくはポゼッションを支配していたが、試合が落ち着くとともに少しずつ愛媛FCの運動量が勝り始め、押し込まれる時間も出始めるようになる。しかし、この日はボランチに入ったタカはプレーエリアが広く、積極的なディフェンスでペースは完全に渡さない。風上に陣取り得点の場面以外にも何度かチャンスを作ったものの、1-0のまま前半を終了。

後半、愛媛に押し込まれる場面もあったが、前半途中から入った豪を中心とした前線からの積極的なプレッシングもあって互角の展開を堅持。崩し切られる場面はほとんどなく、失点があるとすれば事故のようなものだけだろうと考えていた。そして、その嫌な予感は的中してしまう...

相手ゴールキックが風に乗って伸びるとDFラインの裏に落ち、これを拾った愛媛のFW9番が純との1対1を制して同点とされてしまう。それまでも小気味良いショートパスでゲームを作っていた愛媛FCだったが、この得点がきっかけとなり攻勢を強めてくる。運動量で勝る相手にセカンドボールを支配される苦しい場面が続いたものの、相手のシュートミスに助けられたシーンもあって逆転は許さない。

セレッソの勝ち越しを目指した2枚目のカードは、長谷川に代えての成田投入。クラ選以降、ひとつのカタチとなっている健勇FWで勝負を賭ける。そして後半22分、後半から左サイドに移った隼人が高い位置でボールを受けると、ペナエリア中央へクロスを上げる。これを龍が胸で落とすと反転して右足ボレーを愛媛ゴールに叩き込む。U-18代表ストライカーの個の能力が発揮されたゴールで、苦しい展開の中で勝ち越しに成功した。

その後は、Jユース磐田戦での負傷の影響を残している健勇に代わって、U-15クラ選得点王の拓実を最後のカードとしてピッチに送り込む。その後の展開は、同点ゴールを目指して仕掛ける愛媛の攻撃を受ける時間が長く、彼本来の得点感覚が発揮される場面は残念ながらほとんどなかった。それでも、高い位置でボールを奪おうとする意図は感じられ、適応能力という点で先発した3人に劣るものではない。次のチャンスを信じて、U-18でもしっかりと準備してほしい。

終盤も変わらず攻撃を受ける場面が多かったものの、凌輔の身体を張ったボールキープなどもあり、愛媛の攻撃を最後まで跳ね返し続けて2-1のまま試合終了。グループ突破に向けて貴重な勝ち点3を獲得した。内容面では課題となる部分もあっただろうし、次の試合に向けてこの1週間でしっかりと修正していってほしい。一方で、課題がある中でもきっちり勝ち点3が奪えたのは大きかったと思う。愛媛FCユースは、想像していた以上に質の高いサッカーを展開してきた。クオリティの高い相手との対戦において結果と課題の双方を得ることができたという点では、大会の入り方としては悪くないとも考えられる。

この大会では、毎週末に長距離移動をすることで体力面でも楽ではない戦いが続いていく。次の試合に向けてしっかり休み、そしてしっかりと良い準備をしてほしいと思います。