雑誌:「数理科学」

学生時代から毎月本屋でチェックし続けている雑誌、数理科学。テーマと筆者をざっと眺めて一つでも読みたい記事があったら買ってしまうので、今でも購読率は結構高い。5月号は「微積分を楽しむ」がテーマで学部の1、2年生からでも充分読める記事が多く、ε-δの記事やヘビサイドの超関数の話に懐かしさを感じたりと楽しめた。

6月号は、物理学の各分野の基礎方程式特集。物理をかじった事のある人なら見聞きしたことのある基本式がテーマとなっている。筆者にも各分野(といっても半数近くが素粒子論の方々ですが)の重鎮が並び、恩師のインタビューも載っていたため2ヶ月続けての購読。

数理物理などの分野では、基礎方程式そのものの数理的側面に傾倒していくことにより、ともすれば自然現象を離れて数式の微細の議論に迷い込んでしまったりする(自分も学生時代に迷い込んでしまったことがある)。そのような分野だからこそ、現象/概念/方程式をそれぞれ正確に理解する思考のバランス感や、本質を見抜く力(審美眼)が重要となるということか。当時の研究室でも、分野を超えてもっとも幅広く知的好奇心を持っていたのは先生だったような気がする。

シュレディンガー方程式の記事は、後半の不確定性関係の項が筆者の研究内容の紹介となっている。不確定性関係を破る状態の構築(もしくは観測と言ったほうが良いか)は可能、ただしその実現確率は極めて小さいという話。不確定性関係の破れについては以前から様々な議論がなされており、その中でどれだけ本質を突いているのかは分からないが、直感的に熱力学第2法則に似たアナロジーのように思われて興味深かった。

他にもナヴィエ・ストークス方程式の記事も、導出過程や式の持つ性質がコンパクトかつ分かりやすく整理されており、個人的には役に立つ記事だった。某池の人にとっては扱い慣れた世界の話だと思いますが...

こういう雑誌が続いているのは、研究者に限らず、自分のような一般社会人にとっても有り難い限り。時々、テーマや記事の内容から、読者層をどこに設定しているのかな?と思う月もありますが...*1

*1:学部学生で(何とか)読めるレベルでないと売り上げが立たないのでは?などと余計なことを考えたり...