クラブユース選手権 その他雑感

クラ選の魅力は、わずか1週間という期間にJヴィレッジという閉ざされた空間で集中開催される凝縮感にある。他チームの試合を見るのも面白いし、他チームのファンやサポーターの方々と色々と話をするのも楽しい。大会自体は金曜日の準決勝、日曜の決勝とまだ残っているが、Jヴィレッジで見聞きしたり思ったことをつれづれなるままに記してみた。

大会初日。Jヴィレッジに到着したのは第一試合のハーフタイム。後半のみPitch 1とadidas Pitchの試合を中心に、気の赴くままに観戦。adidas Pitchで行われていた試合は浦和−愛媛。自分が見ていた時間は愛媛の攻勢が続いており、ちょうど眼前で愛媛が2-2の同点に追いついた。愛媛の小原勇人が金村賢志郎とのワンツーからペナエリア左をドリブルで抜け出してグラウンダーのクロスをマイナス気味に送ると、フリーで飛び込んできた平田翔也インサイドで合わせてゴールネットを揺らす。今大会、Jヴィレッジで自分が観た試合の中では、チームとしてもっとも綺麗な崩しだったように思う。その後レッズに2点を奪われて敗戦となったが、昨年の高円宮杯やJユースでの印象に違わず、洗練された好チームという印象を受けた。加えて近藤貫太のようなスーパーな選手も擁しているため、秋以降の高円宮杯やJユースでは面白い存在になるかもしれない*1

Pitch 1に目を移すと、名古屋−仙台は名古屋がリードして試合は進行。試合中にも関わらず名古屋サポの方に声をかけていただき、中3の北川柊斗の凄さについて色々とお教えいただいた。そして、話を聞いた2分後ぐらいにその北川のゴールが飛び出してビックリ。ただその時点では、大会3日目の甲府戦でハットトリックを達成して、チームをラウンド8へ導くなどとは夢にも思いませんでしたが...。高原幹、奥村駿という2人の主力を欠きながらの三ツ沢ラウンド進出は、素晴らしい結果といえるだろう。名古屋は関東以外の唯一のチームとなってしまったので、明日の準決勝でも関東以外の代表(?)として、好ゲームを期待しています。

大会初日の第2試合、注目はFC東京−京都。同時刻開催の神戸には申し訳ないと思いつつも、この時間帯はどうしても死のグループDに関心が行ってしまう。第3試合に行われる大分戦への準備のため後半途中までの観戦だったが、互いに良さを消しあう予想外のジリジリした試合展開となった。FC東京は、関東プリンスでは左SBに配していた廣木雄磨を右へと移し、京都の駒井善成マンマークで封じ込める。この采配が功を奏して、前半は駒井のドリブルが爆発する場面は皆無。更に廣木は攻撃面でも貢献し、彼のインターセプトから最後は秋岡活哉がゴールを決めてFC東京が先制。結局この1点が決勝点となって、FC東京は開幕スタートに成功した。京都対策という点で、駒井封じは決して奇をてらった作戦ではないが、FC東京のような強者のチームが、ここまで相手を研究して策を弄してくるとは思わなかった。それだけ、このグループは勝ち点を積み上げることが困難ということなのだろう。京都は駒井が消されていた分、右の久永翼が攻撃面で奮闘していた。ただ、もし伊藤優汰の怪我による欠場がなければ、FC東京も左右のバランスを考慮して、ここまで極端な策を取ることはなかっただろう。

大会2日目。ハイライトは第1試合の広島−京都。FC東京に敗れて後のない京都だったが、彼らにとっては昨年の快進撃の始まりとなったPitch 5での一戦。前半こそ広島に優位に試合を進められたが、後半は覚醒した京都の攻撃がハマって試合を一気に決定付けた。前日のFC東京戦とは異なり両チームは互いに攻撃面で持ち味を発揮し、緊張感の伴う攻防が続く。後半、京都は駒井のドリブル突破で左サイドを制圧。後半途中で怪我明けの久保裕也に代えて三根和起を投入すると、190センチの長身ながらも足元のテクニックを活かした三根の突破が功を奏してPKを獲得。これを山田俊毅が決めて、京都が先制に成功する。そして試合終了間際の後半37分には、駒井のスルーパスに走り込んだ三根がダイレクトに合わせて2-0と突き放す。更にその1分後には、右サイドからの久永の折り返しに途中出場の浅田裕貴が合わせたシュートが、サイドネットに吸い込まれて3-0。京都は広島との一戦を最高の結果と内容で制して、3日目の養和戦に望みを繋いだ。

大会3日目も、注目は第3試合の三菱養和SCユース−京都U-18。第2試合終了時点で2位抜けはガンバと名古屋でほぼ確定していたため、京都としては養和に勝って2勝1敗とし、広島−FC東京の結果から1位突破に望みを賭けたい。しかし前半5分、フワッとした立ち上がりを養和攻撃陣に突かれてしまう。右からの折り返しを受けた近藤貴司のドリブル突破から、京都DFのファールを誘って養和がPKを獲得。これを近藤本人がきっちりと沈めて養和が先制する。京都は左の駒井、右の久永の突破から何度かチャンスを作り出したものの、得点を奪うには至らない。むしろ、養和の速いプレッシングのために、京都はビルドアップで手を焼いている場面が多いように感じられた*2。更に前半終了間際に、養和の北出雄星のスルーパスからペナエリア左に飛び出した近藤がこの日2点目となるゴールを決めて、京都は苦しい状況へと追い込まれて前半を終了する。

この試合、三菱養和田中輝希田鍋陵太の2人の世代別代表が負傷のため欠場していた*3。養和は昨年の加藤大なども含めて多くの世代別代表を輩出しているチームだが、サッカーセンスという意味では昨年のキャプテン玉城や近藤により面白いものを感じていた。近藤は昨年は右のアウトサイドを主戦場としていたが、試合の流れの中で要所に顔を出し、アウトサイドというポジションながらも最終局面に多く絡むプレーが印象的だった。また、この日は右アウトサイドで出場した左利きのドリブラー佐藤聖も局面の突破で存在感を見せており、彼ら2人は京都を相手としても、個として充分通用するレベルにあった。また、前述の北出や川崎圭亮などセンターハーフの選手も、ボールをはたく・仕掛けるといった状況判断の点で優れており、昨年の主力が抜けた後でも、チームの質が保たれている点はさすがだと思わされた。

勝ち点3のみがトーナメントへの可能性を繋ぐ京都は、後半に怒涛の反撃を見せる。後半開始から久保に代えて三根を、そして嶺井政輝に代えて昨日3点目を決めた浅田を投入。更に後半23分には原川力に代えて国領一平を投入して総攻撃を仕掛ける。すると後半30分、右サイドを突破した久永のクロスを駒井がヘッドで合わせて1点差とする。更に4分後の後半34分、駒井が左サイドをドリブルで豪快に突破してゴールを決めて2-2の同点に追いつく。既にプロ契約やトップ帯同が多く、本来であれば最終学年として出場しているべき選手が軒並み不在となった今大会。その中で、駒井は間違いなく大会No.1のタレントだといえるだろう。その彼の劇的な2ゴールに加えて、FC東京−広島は広島の1点リードでFC東京の廣木退場という情報もあって非常に緊迫した試合が続く。ポストやバーに嫌われる場面も含めて、猛攻を仕掛け続けた京都だったが、最後の1点が届かず無念のグループリーグ敗退。一方、FC東京−広島も、後半ロスタイムに広島が2点目を決めたことで得失点差で広島がFC東京を上回る。この結果、Dグループはまさかの関東プリンス王者敗退、そして奇跡の広島のグループ1位突破という結果となった。

水曜日は仕事(会社研修...)のため火曜日でJヴィレッジを後にしたが、ラウンド8では名古屋、柏、ヴェルディマリノスの4チームが勝ちあがり、三ツ沢決戦では、名古屋−柏、ヴェルディマリノスという組み合わせとなっている。24チームが参加した今大会もあっという間に4チームに絞られて、あとは準決勝と決勝を残すのみ。三ツ沢でも、手に汗握る好ゲームが展開されることを期待したい。

*1:高円宮杯の大会スケジュールが既に発表になっているようですが、グループリーグ札幌会場だけはマジで勘弁願います...

*2:これはこの日の京都に限らず、関東のチームとの対戦において、他のチームでも共通した状況ともいえるのだが...

*3:養和の試合は結構観ているつもりなのだが、田中輝希のプレーは見たことがない...