プリンスリーグ関東 千葉県代表決定戦 準決勝

昨年、独特のポゼッションサッカーで強烈なインパクトを残した柏レイソルU-18セレッソ大阪U-18としても、夏のクラ選、そしてリベンジマッチとなった冬のJユース杯ベスト8と、何かしら関わりのあったチーム。昨年届かなかったプリンスリーグへの昇格を賭けた参入決定戦を観にフクダ電子スクェアへ。

柏U-18は全国トップレベルの実績も、昨年はスタメンの大半を3年生が占めていたこともあり今年のチーム力は未知数。そして、千葉には流経柏や市船以外にも強豪高が多数存在し、ベスト4にも習志野高や八千代高といった選手権でもおなじみのチームが残っており、オフシーズンにしてはなかなか観ることのできない興味深い対戦カード。

フクダ電子スクェアはフクアリのすぐ横に設けられた人工芝ピッチでフルコート2面。比較対象として万博大阪サッカー場を思い出し、大阪にもこれぐらいのインフラがあれば...と感じてしまう。


【第一試合】 習志野高校 vs 船橋北高校

両チームとも中盤をボックスに構えたオーソドックスな4-4-2。強風の影響もあって試合開始からボールの落ち着かない展開も、習志野高は縦へのシンプルな展開から2トップが決定機を演出し、次第に船橋北高を自陣に押し込んでいく。そして開始序盤に左CKからヘディングで押し込み習志野高が先制。ニアサイドのGK前に選手を大量配置し、キーパーが飛び出せない状況を作ってサックリ流し込んだ。これだけペナ内で動きのないCKを観たのも初めてのような...

その後も習志野高の2トップに2列目の二人が絡み決定機を量産するも、追加点を奪うには至らず。習志野高の攻撃はシンプルにサイドの高い位置に基点を築いて崩していく形だが、SBやボランチなど周りのサポートが速く、ボールホルダーが孤立する状況が少ない。対する船橋北高もカウンターからチャンスを伺うが、なかなか綺麗な形でフィニッシュに持ち込めない。結局、前半は習志野高が押し気味に試合を進めたまま1-0で終了。

後半、立ち上がりから船橋北高が積極的に仕掛けてきたことにより試合が動く。船橋北高11番の突破から習志野高CBに2枚目のイエロー。一人多い状況となった船橋北高は、FW9番を軸に次第に決定的なチャンスが作れるようになる。習志野高は前線を一枚削ったものの、時折鋭いカウンターから船橋北高のゴールを脅かす場面も。しかし、終盤にはCKなどセットプレーの流れから船橋北高が押し込む展開へと移行。ロスタイムのCKではにはGKも上がってゴールを目指したが、習志野高が1点を守りきり決勝進出。FWの7番11番や2列目の突破など個でも組織力でも上回っていた習志野高だったが、決して楽な展開とは言えない一戦だった。

対する船橋北高も、2トップの9番11番、中盤を引き締め続けたキャプテンの10番は試合の中でも際立っており、この先熟成していけば面白いチームになりそうな印象を受けた。


【第二試合】 八千代高校 vs 柏レイソルU-18

個人的にはメインイベントの一戦。柏U-18は昨年同様の中盤を逆三角形に配した4-3-3。対する八千代高は中盤をフラット気味に構成した4-4-2。開始早々、柏は両SBが高い位置へと張り出し、躊躇なくウイングを追い越していく。選手が変わってもチームのスタイルは昨年同様ということか。試合序盤、ワントップの17番が右サイドへと流れ、ライン際深く突破しマイナスのグラウンダーを右ウイングの14番が受ける。左足のコントロールシュートは左ポストの内側を叩き柏U-18が先制。このまま柏のペースで試合が進んでいくのかと思わされたが、八千代高は柏相手に受身にならず、積極的な試合運びで次第に主導権を奪い返していく。

八千代高は最終ラインを高く保ち、前線から積極的なプレッシングで柏の最終ラインのポゼッションを分断する。昨年の柏はどのような状況でもポゼッションに強いこだわりをみせていたが、この試合ではスペースへのロングフィードも比較的多く見られた。ボールホルダーのCBがフリーになるか、ワンボランチの12番にボールが入ったタイミングで両ウイングが内へと絞り、開いたスペースにSBが躊躇無く飛び込んでくる。そこへのフィードが繋がればビッグチャンスという状況も、八千代高の高いラインコントロールから仕掛けの多くはオフサイドに。この試合、最も多くオフサイドを取られたのは、柏の左SBだったのではないだろうか。

柏のスタイルは、(1)基点となる両CB+ボランチマンマーク気味に押さえ、(2)3列目以降がゾーンでディフェンスでスペースを作らなければ、理屈の上では良さを消すことができる。しかし、(1)には前線の献身的なプレッシングが必要となり、(2)も目まぐるしくスペースを狙い続ける前線5人の動きを受け渡していくのは簡単なことではない。しかし、受けに回ることなくディフェンスから積極的にチャレンジし続けた八千代高に、次第にゲームの流れは傾き始める。前半30分頃*1、右CKから6番がボレーを叩き込み同点に追いつくと、更に前半40分頃、FW10番が最終ラインの横パスを掻っ攫い、GKとの1対1をきっちり決めて逆転に成功。しかし、柏U-18もその直後に、最終ラインのフィードからMF9番がライン裏に飛び出してゴールを奪い、前半は2-2で終了。

八千代高はラインを高く保ち、前線からの積極的なプレスで得点シーン以外にも決定機を演出。2トップの7番10番がボールを持てば、後ろから「仕掛けろ!」「シュートまで!」と声が飛び、当人達も躊躇い無く1対1に挑んでいく。また、あくまで見た目だが八千代高の選手達は体幹がしっかりしており、特に前線の選手に関しては、フィジカルでは優っていたようにも見えた*2

柏U-18も、多くのオフサイドでチャンスが失われてはいたが、ひとつ裏に抜ければ即決定機という場面が多く観られた。個人としても要所要所では柏の個の技術の高さが目立ち、特に左ウイングの10番の突破力には目を見張るものがあった。

後半。柏はFWの3人加えて、ボランチ以外のMF2人も目まぐるしくスペースを作り狙う動きを続ける。何度かサイドを崩し決定的な場面を演出するも、得点には至らない。また、ちょっとした連携のズレや終盤に足が攣る選手が出るなど、シーズン序盤の難しさも感じられた。一方、八千代高は積極的なプレッシングが90分衰えることはなく、ショートカウンター気味な展開から決定機を演出する場面が観られたが、こちらも得点を奪うまでは至らない。互いに積極的な交代策で状況打開を試みるも、選手達の運動量とは反比例するようにピッチ内は膠着状態に。

後半40分頃、柏の左SBの選手が2枚目のイエローで退場。ピッチを離れ号泣する姿はプリンスリーグへ向けた想いの強さを感じさせるものだった...

そして試合は後半スコアレスのままタイムアップ。延長なしのレギュレーションのため、試合はそのままPK戦へ。

柏の先行で開始されたPK戦。八千代高の1人目がGKの攻守に阻まれ、いきなり苦しい状況に追い込まれる。しかし、八千代高GKが柏4人目をストップし、サドンデスに持ち込む。そして柏の7人目のシュートを完全に読みきってセーブすると、その後のキッカーがきっちり決めて八千代高が決勝進出の切符を手に入れた。両チームとも枠外シュートゼロで、失敗は全てGKのストップによるというのも個人的には珍しいように感じた。

第一試合の後半途中、自分が試合を観ていた近くで八千代高のGKがアップを始めた。その時は率直に「小さいな」という印象を受けたが、いざ試合になると最終ラインからの指示と高いスキルでゴール前に安定感をもたらし、フィジカルの違いを意識させない存在感を見せていた。その印象からか、PK戦が決まった瞬間「八千代勝つんちゃうかな?」という気がした。サッカーでは、特に育成年代ではGKをサイズ(だけ)で評価してしまう向きがあるように感じるが、ウチの純とかこの日の八千代のGKのような選手を観ると決してそんなことは無いと強く思う。GKに必要なのは高い戦術眼と技術、そして逆境でも折れない精神力であり、サイズの大きさなどはむしろ付加的要素なのだと。現に今回A代表に呼ばれた菅野は実際は175cmしかないらしいし、実績No.1の川口も178cmと小柄な部類に入る。

全国トップクラスの実績を残し、プリンス関東の一部で優勝争いして然るべきチームが昇格に苦しんでしまう。今年は時間が許せば関東プリンスも見たいと思っていただけに、どこかで柏の勝ち上がりを期待している部分があった。しかし、千葉という地域は、それすらも簡単に許さないほどサッカーのレベルが高いということなのだろう。この試合に勝利した八千代高は、開幕前の時期にもかかわらず完成度はかなり高いように見えた。もし、この先ももっと精度が上がってくるのであれば、夏や秋には流経柏や市船を脅かす存在になっていくかもしれない。関西のレベルが低いとは思わないが、関東はチーム数が多い分だけ底の深さが違う。切磋琢磨するという意味でも、野洲大阪桐蔭、滝二以外にも個性豊かなチームが関西に出てきてほしいと思う。

昨年、セレッソ大阪U-18はJユースで準優勝し、今年こそは頂点を...と選手もスタッフも、そしてサポも思っていると思う。しかし、自分達の思っている以上に全国はまだまだ広いなと、またひとつひとつ、謙虚な気持ちで積み上げていかなければならないんだなと、改めて思い直される1日でした。

*1:時間は感覚的なものでかなりアバウト。±5分ぐらいの誤差があると思って読んでください。

*2:第一試合の時間に八千代高の選手の多くが体幹レーニングと思われるストレッチをしていた。チームとして意識して行っているのかもしれない。