構造・安定性・ゆらぎ

早いもので社会人になって今年で4年目。名刺にも良く分からん肩書きがつくような身分になり、大学の研究室にいた頃は遥か昔の記憶となってしまった。大学時代の同期は、順調にいけば今年の春に後期博士課程を修了し、一人前の研究者として世に出て行くことになる。...はずなのだが、先日友人に話を聞いた感じだと、近しい研究分野にいた大半の同期が研究者の道を諦めるらしい。先日、自分のいた研究グループを訪れたときにまず最初に感じたのは、何とも言えない閉塞感だった。あの手の業界は楽しんだ者勝ちだと今となっては思うのだが、30を目の前に向かえて確たる収入のない生活を本当に楽しむには、相当に強い精神が必要なのかもしれない。
とまあ就職してかなりの年月が経ったわけだが、物理全般に対する興味はいつまでも持ち続けたいと思って生活を続けている。ここ一年ぐらいは、熱力学の復習から非平衡系の話へと興味を絞りつつ時間を見つけて勉強(というほどformalなものではないが)など。もっとも、平日はアレやし休日はご覧の通りなのでなかなか時間を取ることはできないのだが、たとえばLiebの公理的熱力学を読むのはしんどいのでこれを買って読んでみたり、SST構想に興味を惹かれて論文を勢いで目を通してみたり、その他非平衡関連の論文を詳細かまわず漁ってみたりといったことをしている。もっとも、真面目に追えるだけのゆとりも頭もないので、大して理解はできていないわけですが。
上記のSSTやこれまで漁ってきた論文は、強い非平衡下、もっと言えば局所平衡状態を仮定できない系を対象としているのだが、そもそも局所平衡を仮定した範囲での議論をまともに読んだことがないと思い、近頃は表題の教科書をボチボチ進めようとしている。著者のグランスドルフやプリゴジンはケミストな人だからなのか、局所的に熱力学量を導入してぐんぐん進む理論展開は、なんというか豪快で力強い感じを受け、新鮮。計算をきちんと手で追うことをしていないので、気づくべきところに気づけないとか、全体に理解が浅くなるという問題はあるが、これについてはもう仕方ないだろうと最近は諦め気味。
毎日が遅いとはいえ、せっかく引っ越して自由な時間が(若干)増えたのだから、もう少し意識してこれらに使える時間を増やそう、と思う今日この頃。