大仰なタイトルですが

神は老獪にして…-アインシュタインの人と学問

神は老獪にして…-アインシュタインの人と学問

これを最近読み始めた。まだ全体の5分の1程度しか読んでいないが、学術的功績だけをとってみても、これまで自分が持っていたイメージとは異なっていることが分かる。アインシュタインといえばすぐに相対性理論が思いつくが、多岐にわたる彼の業績の大半は統計的推論に基づくもの。光電効果の発見、ブラウン運動の解明、固体量子論の創生、ボース・アインシュタイン凝縮、これらはみな、今で言う統計物理学の概念が根底にあるものだといえる。こうして見ると、むしろ相対論の方が、アインシュタインにとっては「特殊な」業績であるようにさえ思えてくる。
また、量子力学の確立解釈に対する強い反論から、一見、アインシュタイン量子力学の間には強い関連がなさそうに見えるかもしれないが、「一般相対論についてより100倍量子論について考えた」という彼の言葉にあるように、実は量子論の創出に欠くことのできない人物でもあったということができる。先に出てきた光電効果は前期量子論の萌芽において欠くことのできない業績であり、また、固体量子論ボース・アインシュタイン凝縮といった業績を通じて、今では物性物理学と呼ばれている分野の創始者の一人でもある。
大学で散々物理を勉強してきても、「アインシュタイン=相対論」というイメージは拭えなかったし、物性論でアインシュタインの名前が出てきてもこの印象を覆すことは無かった。
研究を辞めてから、アインシュタインの凄さを痛感してしまった。自分の学生時代の専門がボース・アインシュタイン凝縮だったということもあり、なんというか、情けない気分が湧き上がってきてしまった。