ナイキプレミアと関西学生サッカー(桃山大vs大体大)

全国リーグの翌日も堺のナショトレで観戦。堺東からバスに乗ったのだが、昨年とは違いナショトレまでの直行便が増えていたりと利便性は向上している様子。ただ、小学校から大学まであらゆるカテゴリの試合が組まれているためか、堺駅西口からは大混雑のバス車内...。また、中学1年からしばらくは堺駅のすぐ近くに住んでいたこともあって、バスの中から観る外の景色の変化には何となく感慨深いものが感じられたり。自分が山口の田舎から出てきた頃はリーガロイヤルすらなかったし、駅舎はプレハブだけの小さい駅だった。駅ビルも存在せず、現在はラウンド1などのアミューズメント施設もあるみたいだが当時は皆無。高校の頃は土日の部活帰りによく中百舌鳥の和光レーンでボーリングしていたが、和光レーンは逆にもう無くなっているらしいし。

ナイキプレミアの決勝は2連覇を狙う京都U-15と関東代表の横浜FMジュニアユース。9時半と早い時間にキックオフだったため、数分ほど遅れてスタンドへ。両チームとも前線からプレスをかけていくためか、双方ともリスクを避けた縦へのフィードが多く観られた。これまでは関東のJユースや京都にしても平面で繋ぐ印象が強かったので、個人的にはちょっと予想外な展開。京都は11番の1トップに14番や12番がサポートに入りながら、速い展開で裏のスペースを狙っていく。対するマリノスも似た展開となっていたが、2トップに2列目の2人を含めた4人が京都の最終ラインに張り付くような形が多く観られた*1。京都の方が、11番のポストアップと裏を窺う動きでやや主導権を握っているように感じられたが、トータルとしては膠着した時間帯が続いた。

そして思わぬ形で京都にチャンスが訪れる。セットプレーからの右クロスのこぼれ球に京都の11番が一瞬早く反応。ゴールネットを揺らして先制点の奪取に成功する。その後、優位に立った京都は前線4枚のカウンターから何度か好機を演出。追加点には至らないものの京都ペースで試合は進んでいく。対するマリノスも、後半から体格は小さいもののドリブルスキルの高い選手を投入するなど、選手交代を交えながら打開を図るものの、決定的な場面を作るまでには至らず、そのまま京都が逃げ切って試合終了。二連覇を達成するとともに、日本代表としてマンチェスターへの切符を手にすることとなった。

シーズン序盤のこの時期が全国大会、しかも世界大会を賭けた試合ということで、堅い試合内容ではあったかと思う。ただ、これからより魅力的なサッカーを構築し、世界大会でも素晴らしい日本の、京都のサッカーを展開してほしいと思います。しかしナイキプレミアにこうも頻繁に関西代表として出場、しかも二連覇してしまうとは京都恐るべし...


そして12時からはメインイベントの桃山大vs大体大の一戦。本部長曰く状態の良い2チーム同士の一戦は、その言葉に違わずスピーディかつテクニカルな、非常に面白い試合内容となった。

桃山大はセレッソのOBが多く、CFに中東優治、右SHに道上隼人、更にボランチに面家康生がスタメンとして名を連ねる。対する大体大はベンチに昨年U-18卒業の藤山宗徳が控える。スタンドの多くのメンバー外選手を観ると、新1年にしてメンバー入りは正直素晴らしいと思う。豪や佳介も宗徳に負けず、メンバー入り、そしてトップでの出場を目指して頑張ってほしい。

両チームともボックス型の4-4-2を採用し、状況判断の速さをベースとしたパスサッカーを展開。また、SHに縦に速い選手を配するなど、チームのスタイルにも共通点の多い印象。桃山大の2トップは、優治のポストアップと斎藤の飛び出しという役割が明確になっており、互いに良さを引き出しあえているように見えた。特に優治は身体を張るだけでなく足元の技術も安定しており、ポスト役として前線でしっかりと起点を確立。前半には左足でループ気味にゴールを狙い、後半にはゴールに背を向けた状態から右足アウトでスルーパスを出すなど、U-18時代と比較して確実に引き出しが多くなっていた。あとは3年時のオカムのように得点という結果をしっかりと残すことができれば、もうひとつ上へのステップがはっきりと見えてくると思う。

隼人は縦への突破に更に磨きが掛かっており、1対1であれば相手選手をものともせず右サイドからチャンスを量産。唯一の得点シーンではトップスピードの状態からマイナスに正確なクロスを折り返すなど、自らのスピードに対するプレー精度は確実に上がっている。後半、2人のDFの間を突破しペナエリアへと侵入するプレーには鳥肌が立った。

そして康生。安定感という意味では最もプロっぽい選手かもしれない。対人の強さはユースの頃と変わらず、ビルドアップや展開の部分でもしっかりと貢献できるようになっている。ゲーム感や展開を読む能力も変わらず高く、プロフェッショナルなファールは観ていて憎らしいほど。また、科技高時代にはFWとしてセレッソU-18をも苦しめた須ノ又と組んだボランチも興味深い*2。須ノ又は縦へのスピードが印象深い選手だったが、足元のスキルも高く、前線に顔を出すと得意のドリブルでスルスルっと抜け出していく。

試合は、前述の隼人の突破からの低く速いクロスに、エース斎藤がファーでダイビングヘッドを豪快に合わせて桃山大が先制。その後も桃山大が優勢に試合を進めるものの、追加点を奪うには至らず。後半になると大体大は選手交代で状況の打開を試みるも、いまひとつ交代による成果が噛み合わないまま終盤を迎える。そして残り数分という状況で大体大の切った最後のカードは宗徳。しかし時間も少なく決定的な仕事をするには至らずに試合終了。好調同士の一戦を桃山大が制し、上位定着に向けて一歩前進した。

続く第二試合の関学大阪南大の一戦も観戦予定だったが、残念ながら純がスタメンから外れたため観戦することなく帰宅。ただ、この日も河田が非常に良かったみたいだったので、ちょっと観てみたかったような...

というわけで、色々な方々とも久しぶりにお会いしお話をすることができ、そして何より楽しい試合を堪能することのできた充実した2日間の大阪滞在でした。

*1:そういえば、昨年観たプリンス市船戦でも、熊谷アンドリューが前線に張り付いて、似たような形で膠着していたような気もする...

*2:この時の2失点は、いずれも彼にやられたのでした...

高円宮杯プレミアリーグWEST vs 東福岡高校 @J-GREEN堺 S1

個人的には今季初のU-18観戦となったGW期間中の全国リーグは、九州の赤い彗星こと東福岡高校との一戦。例年、プリンスリーグでは開幕から好調を維持することの多かったセレッソだが、今季は2分1敗とスローな立ち上がり。今季初勝利を上げて、開幕から着実に勝ち点を積み上げている広島や京都に離されないようにしたい。


セレッソ大阪U-18 (プレミアWEST4節 vs東福岡) のフォーメーション

created by TextFormations :M :R


スタメンは昨年からお馴染みのメンバーだが、ベンチは全て1年生。しかも耀誠以外は全て外部から加入ということもあって、彼らがどのような選手なのか観ることができるのも楽しみ。

個人的なこの日の最大の見どころは、宗星のボランチ。西U-15時代はSBやSHを主戦場としていたが、その戦術眼と状況判断の良さをセンターでどのように活かせるかが、ゲーム運びの大きなポイントとなるように思われた。

試合開始早々、宗星ボランチの効果が結果として結実する*1。カウンター気味の展開から宗星がピッチ中央右でボールを受けるとタメを入れて将へ、そして左サイドの拓馬へと展開。右に切り返しを入れた後の、拓馬のアーリー気味のクロスに合わせた洋亮のヘッドはゴールバーに弾かれる。しかし、このこぼれ球を将が右足ボレーで叩きつけたボールがゴールネットに突き刺さり、セレッソが先制に成功した*2

その後も、将のポストに拓馬と洋亮が絡み、更に宗星と左SBの武瑠がサポートする形で左サイドから東福岡陣内へと攻め立てる展開が続く。元西U-15メンバー同士による小気味よいコンビネーションは観ていて楽しく、お仲間曰く今季最も良い内容の展開が続いた。一方、攻撃が左に偏ったため、右サイドの雅斗と小暮のサイドはボールに絡む展開が少なくなってしまったが...この良い時間帯に追加点を取ることができれば、試合展開はもっと楽になったのだろう。しかし、時間とともに東福岡のプレスが機能し始めたことで、最終ラインからのビルドアップ、特に大地と宗星のボランチが前を向いてボールを展開する場面が減ったこともあり、試合は膠着状態へと移行していく*3

また、東福岡はビルドアップの過程でセレッソの左サイドへのロングフィードを多用してきた。おそらく、武瑠との体格差を意識した狙いだったのだろう。武瑠をはじめとした個々のしっかりした対応で直接ピンチには繋がらなかったが、それまでチャンスに絡んでいたセレッソの左サイドの選手達を低い位置に押し込むという点では、東福岡の意図通りだったのかもしれない。この対応が、前線からのプレスと相俟って、セレッソの攻撃を停滞させる一因になっていたようにも思われた*4

後半開始からしばらくすると、慎二に代わって丸岡へと交代。雅斗がCBにスライド、宗星が本来の右SBへと移動して丸岡はボランチに入る。丸岡はフィジカルでも上級生に対して互角の対応をみせると、ボールを奪えば前線へと鋭いボールを配給してセンスの良さを感じさせた。1年だと緊張からか本来のプレーを出し切れない選手も多いが、今年の1年はGWで観客も多い中でも、しっかりと自分のプレーができていたのは個人的にちょっとした驚き。

その後、拓馬に代えて耀誠、将に代えて翔と時間とともに前線の選手を変えていく。耀誠は上背に加えて高い技術も備えた大型FW。塁っぽいとも言えるし、個人的には健勇に似た印象もあるのだが。拓馬に変わってピッチに入ったことへの意識があったのか、この日は前線からの守備もしっかりこなし好印象。ヒラショーも含めて、既にベンチに入っている1年はフィジカルがしっかり整っており、東福岡の強靭なDFにも当たり負けせず逞しさを感じさせる。

試合は終盤へと差し掛かると、時間ともに不安定なジャッジもあって荒れた展開となり、両軍ベンチ含めて激しい声が飛び始めた。その中でも、グレさんに代わってピッチに入った魚里の突破が起点となって、セレッソが再びチャンスを窺い始める。速さが特徴の選手だが、一昨年に在籍していた隼人とはまた違うタイプ。隼人は縦にポーンと蹴りだす感じのドリブルで相手を置き去りにするが、魚里は足元に吸いつくようなタッチで狭いスペースにスルスルっと入っていく。試合終了間際、カウンターを起点とした波状攻撃から相手のクリアボールを受けると、狭いスペースをドリブルでペナエリアへと侵入。東福岡DFがたまらず後ろから魚里を押し倒してしまいセレッソがPKを獲得。これを洋亮がきっちりと流し込んで2-0とし、プレミアリーグ4戦目にして今季初白星を挙げた。


セレッソ大阪U-18 (プレミアWEST4節 vs東福岡) のフォーメーション

created by TextFormations :M :R


この試合を観て、ここ数年で監督も変わっているものの、前線のプレスを担う運動量豊富な人材がチームの軸となっていることは変わらないという印象を受けた。過去を遡れば、赤堀、龍、豪、舜司といった選手達が前線からチームを支えた。そして今年は西村ツインズの驚異的なプレッシングがチームとして欠かせない存在となっており、彼らの働きがこの日もチームにとって大きな助けとなっていた。

一方、選手間のポジション争いは例年以上に激しくなっている。40人という大人数に実力の拮抗した選手が集まっている中で、スタメン+ベンチの11+5枠、更にはリーグ化によるAチーム登録枠を巡った厳しい選手間の競争がある。大会方式の変更によって枠の制約は厳しくなり、ひょっとしたらモチベーションを保つのも例年以上に難しいかもしれない。それでも、高い意識を持ってレギュラーをそしてトップチームを目指して、今年もまた頑張ってほしいと思います。

個人的には、昨年以前のように毎試合現地で応援することはできないと思いますが、気持ちは以前と変わらず選手達の頑張りと成長を願い、1人でも多くの選手がトップチームへの扉を開けることを願っています。

遅くなってしまいましたが、今シーズンもよろしくお願いいたします。

*1:JFAの速報は27分となっているが、実際は前半10分くらいの早い時間帯だったと思う。

*2:追記。JFA TVで改めて確認したら、宗星がいったんボールを収めて将に預けると将が左へと展開。そのまま宗星がニア、洋亮が中央、将がファーへと流れて本文の通りのゴールとなっていました。

*3:プレスをかいくぐってボールを運ぶという点では、セレッソに限らずどのチームも苦労している様子。ただ、柏の育成あたりはひとつの解を持っているようにも思われるが...

*4:そういえば、昨年の滝二も対角へのワイドな展開を徹底していて、それなりに苦しめられたような記憶が...

ACL諸々

新居のスカパー環境も整った!と思ったら、ACLはBSに入っていればあまり関係ないのか...

ということで、ACLは3戦ともTV観戦。ただ、LIVE中継時に自宅に帰っているなどあり得ないので、いずれも情報遮断して帰宅した後に録画観戦でしたが。

1, 2戦目はさておき、3戦目の全北現代戦でやっとセレッソらしいサッカーを観ることができた。といっても、昨年と比較すれば、仕上がりは相当に早い(!?)と言うことになるのかもしれない...。そして攻撃が機能すると、守備面も劇的に改善される。ポゼッションを高めてハーフコートに押し込むことで、奪われた後のボールホルダーへのアプローチが効果的となり、相手のロングボールを収めて攻撃のターンに戻るを繰り返す。

言葉にすれば単純なプロセスの繰り返しだが、前線に人数をかけてハーフコートの状態を作ることが前提なので、ビルドアップはそれなりにリスキー。昨年はマルちゃんとアキさんのキープ力で、上手くリスクマネジメントが出来ていた。しかし、今年はマルちゃんのコンディションが上がらず、アキさんの変わりもなかなか見出せない状況だったために、ともすれば違うアプローチを試行しなければならなくなるかもと思ったりもした。それだけに、全北現代戦では「らしい」サッカーを観ることができて嬉しかったし、安堵させてくれるという点でも満足な一戦だった。細かい点を言いだしたらキリがないが、この試合はまず手放しで喜んでもいいのかと。

中後はカウンターを受けた際の準備という点ではハネケンに劣るかもしれないが、展開力の高さは良い。攻撃面でも上手く噛み合えて来ているとも思うので、あとは守備とのバランスをどうするかかな。アマラウのように、攻撃参加してしまったらミドルシュートできっちりプレーを切ってしまうwというのもひとつの手かも。ただ、このポジションは螢やタカに奪ってほしいというのが、素直な希望なんだけどなぁ...

ボギョンは才能の片鱗は時折見せるけど、全貌はまだ明らかになっていないような。全北現代戦では、フィジカル面も含めてひとつ後ろの方が合っているような気もしたが。キヨがいないと前線は全員足元で受けるになってしまうし...

倉田はガンバユース時の印象しかないが、その時の印象からプレースタイルはしっかりフィットすると思っていた。実際は、予想以上に時間をかけずにフィット出来ているようで、良い意味での驚き。しかし、アキさんとか倉田とか、少し前だとセレッソのユニを着るなんて考えられなかった。2006年に戻って、あの時のガンバユースの中心選手がセレッソに来ると言われても絶対信じられなかっただろうし...

ピンパォンはまだ謎だが、こういう若干速くてテクニカルな選手は嫌いではないw アドのように1人で打開できる選手ではないようだが、3シャドーと上手く溶け込みそうな可能性を若干ながらも感じる。実現すれば、チームとして強くなるかはさておき、サッカー自体はもっと面白くなりそう。ただ、個人的な希望としては、そろそろ龍の1トップを真剣に試してみても良い時期かなという気もするが...

TVで観ていると見知った顔が結構目につき、羨ましいなぁと思うことが多いのも事実。平日のACLはどう足掻いても行けないので、何とか再開後のJリーグ高円宮杯全国リーグには何とか調整して行く時間を作りたい。

東北地方太平洋沖地震に被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。

私は地震発生時に海外にいたため、東京在住ではありますがその揺れを経験したわけではありません。しかし、BBCやCNNから流れる映像と報道は容易に受け入れられるものではなく、心が整理されないまま帰国の途につきました。

この一週間は交通事情の制約による通勤困難や一部の情報に翻弄されての早期帰宅などもありました。また、輪番停電やこれに伴う節電はこれからも続いていくと想像されます。原発報道も、もちろん近隣の方々にとっては依然として脅威であることに変わりはなく、また予断を許さない状況が続いているようです。しかし、少なくとも首都圏においては想定されうる影響等が正確に認識されるようになり、週末にかけて街全体が落ち着きを取り戻し始めてきたように思います。

月曜日、本数が制限された満員電車に揺られながら、この状況下で働いていて良いのかという考えが過ぎりました。しかし、被災者の皆様が新たな生活に向けて一歩を踏み出そうとしたときそれを受け入れられるような経済状況にあること、そのために働ける人がしっかりと経済活動を行うことも重要だと、今は考えるようにしています。

もちろん、私たちの仕事はすぐに経済復興に結びつくようなものではないかもしれません。ただ、限られたエネルギーの中で働くことのできる環境を与えられていると思うと、これまで以上にしっかりとやらねばという意識を持ちながら、まずは日常を継続していくところから始めたいと思います。

ひとりでも多くの方が救われ、そして少しでも早く被災地が復興し平穏な日常が戻ってくることを願っております。

ご挨拶

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

私事ですが、2011年1月15日という日を無事越えて、家庭を持つこととなりました*1。一部のぬるぽな方々には現地でもいつも通りの煽り?もいただき、今はやっと新年を迎えることができたというような気持ちです。

関東で生活しそして家庭を持つこととなり、セレッソとの関わりがどのように変わっていくか正直なところ今はまだ分かりません。しかし、スタジアムへそして育成年代の現場へ行く機会が減ったとしても、むしろもし減るのであればその分燻ぶるであろう悶々とした情熱をエネルギーに、与えられた状況下で可能な限りできることを、と思います*2

といっても基本的には現場主義なので、結局のところはどれだけ現地で観れるか。そしてkazu-pさんのように不足したセレッソ分を補おうとするあまり、現場で今以上に高テンパリな姿を晒すだけのような気もしますが...


本年も何卒よろしくお願いいたします。

*1:一足先に本部長のところでリリースされてしまいましたが...

*2:U-18全国リーグが東西制となることが観戦の難しさを拍車させる。ひとつのリーグにして関東圏での試合が増えれば、というのは個人的な切ない願い...

育成が描くセレッソの未来

今年もU-18からのトップ昇格が発表された。夛田凌輔と野口直人。夏に昇格が発表された健勇を含めると今年は計3人。黄金世代と言われた螢・マルの代、そしてクラ選を制したタカ・龍の代を越える人数の昇格となった。

凌輔はサザンウェイブ泉州FCからU-18へ加入すると、プリンスリーグを前に1年生にして早々とポジションを奪取。当時の凌輔を初めて観た藤畑さんが予言したように、夏のクラ選で全国的に注目を浴びると一気に世代別代表に定着した。U-17W杯こそ怪我の影響で出場は叶わなかったが、同世代を代表するSBとなった。そしてセレッソではSBに加えてCBとボランチ、また副さんが3バックを採用していた1年の高円宮杯の頃はシャドーの1角を担うなど、豊富な運動量をベースとしたマルチロール性を発揮した。

何より凌輔の魅力は、彼自身のメンタルの強さにあると思う。U-18では、負けん気の強さから試合中に熱くなったり、また敗戦を受けて涙を流すこともあった。しかし、ひとつの試合に、そしてここぞという場面に全力を傾けられるメンタルの強さこそ、彼自身をトップチームへと導いた原動力といえるだろう。トップでも、若くしてプレーでチームを引っ張っていけるような存在となっていくことを期待してしまう。

複数のポジションをこなせる凌輔だが、目先のライバルは両SBの大輔やシャケ、そしてU-18の先輩でありA代表候補でもあるマルあたりになるのだろうか。ルーキーイヤーとはいえACLを含む過密日程となる来季、しっかり準備すれば意外とチャンスは早く回ってくると思う。持ち前のハートの強さを前面に出したプレーで、長居スタジアムキンチョウスタジアムで多くのセレッソファンやサポーターを魅了してほしい。


そして野口は、吹田JFC千里丘からセレッソ大阪U-18に加入。凌輔と同様に複数のポジションをこなせる器用さを武器に、1年の頃から少しずつ出場機会を得るようになる。2年時の中谷セレッソでは、一部の核となる選手を除いて交代枠を最大限に活用し、選手を次々と入れ替えていく展開が多かった。その中でノグはSBやSHとして次第に出場機会を増やしていくと、秋以降はチームに欠かせない存在となっていた。そして3年では左SBを主戦場とし、健勇が抜けた後は凌輔と同様にチームの軸となって活躍した。

正直に告白してしまうと、ノグ昇格の噂を聞いた際は喜びよりも驚きの方が多かった。驚きの理由は、昨年、一昨年と同レベルでトップでも通用しそうな選手達がいたので。守備面で世代屈指の対人能力を持つ選手、運動量が豊富でバイタルエリアを1人でカバーできる選手、更にはスピード溢れる縦への突破力が魅力の選手。個性溢れる彼らの昇格が見送られていたこともあり、SBやボランチ、SHの昇格には、想像以上に高い壁があるようにも感じられていた。それだけに、ノグ昇格の報は驚きをもって受け止めることとなってしまった。

ノグはどちらかというと、彼らのような強烈な個性が前面に出る選手ではないのかもしれない。しかし、当然トップチーム昇格に値するだけの能力を持ち合わせている選手であることは間違いない。今季のU-18では左SBでの出場が多かったが、個人的にノグの主戦場はあくまで中盤、セントラルMFだろう。個人的にそう思わせる理由が、これまでの中央でのプレーの中にあった。最初にノグの能力に惹きつけられたのは、彼が2年生時のプリンスリーグ神戸戦。この年の中谷セレッソは龍やタカ、健勇といった世代別代表の個のチカラを前面に押し出す一方で、リスクを避けてロングボールを多用することの多いチームだった。この試合でも縦に早い段階で放り込む場面が続いていたが、途中交代でノグが入るとサッカーの内容が一変。ノグが最終ラインからボールを引き出し的確に前線へと配給することで、いきなり平面で綺麗に崩すパスサッカーへと変貌。ボールポゼッションを支配して、神戸のDFラインを一方的に崩す展開に衝撃を受けた。結果として敗れてはしまったものの、選手交代が劇的に展開を変えた稀な試合として記憶に残り、個人的にその後はノグのボランチ起用を期待するようになっていた。

しかし凌輔と同様に彼自身のマルチロール性のためか、チーム状態に合わせてSBやSHで使われる場面が多く、ボランチとして出場する試合を観る機会はさほど多くはなかった。3年に上がって大熊監督が指揮するようになってからも左SBが主戦場となっていたため、期待はあったものの正直なところ昇格というイメージを持つことは難しかった。それでも、フロントが昇格を決断した背景には、彼の状況判断の速さや配球センスに対する然るべき評価があったのだろうと思うし、ノグのような選手をきちんと評価したフロントは、率直に良い仕事をしたと思う*1

ノグ本人にとって昇格は目標であったと思うが、その一方で自身の昇格がプレッシャーにも感じられていた時期もあったかもしれない。今更ながらにそう思うのは、夏のクラ選頃から彼の表情から笑顔が少なくなり、自分を追い込んでいるようにも感じられたので。それでも新シーズンが始まればトップで戦うということ、セレッソのエンブレムを胸に戦うことがノグ本人にとって大きな喜びとなり、そしてゆくゆくはセレッソの新しい歴史を作っていく選手に成長していくと確信している。近年の昇格メンバーと較べると派手さは無いかもしれないが、オシムが言うところの「水を運ぶ選手」となり得る存在だと思う。これまでの昇格メンバーとは異なる個性を、JリーグそしてACLのピッチで観ることができる日を楽しみにしています。


昇格おめでとう!

そしてセレッソの誇りを胸にトップチームでも頑張れ!凌輔!!ノグ!!

*1:以前にも少しだけ触れたが、身体的な能力の高い選手は誰にでも分かり易く評価される一方で、状況判断のセンス(すなわちサッカーセンス)の良い選手は正当に評価されていないと感じていただけに、ノグ昇格の報は率直に嬉しかった...

雑感など

しばらくBlogの更新が滞っていました。個人的な事情で最近あまり試合を観に行けていないのは事実ですが、更新が滞っていたのはただの怠慢でした...というわけで、最近観戦した(それほど多くない)試合の雑感も含めながら感じたところを簡単に。


トップチームはTVでリーグ戦はひととおり観戦しているが、最近の現地観戦は等々力での川崎戦と平塚での湘南戦。等々力はここ数年のなかでベストに近い試合だったと思う。ACLへの生き残りを賭けた緊張感の途切れない試合展開。夏にはチームの勢いを感じる試合展開が多く、秋の停滞を越えて今は逞しさの感じられる試合を演じることができるようになった。決定力の低さは依然として課題ではあるが、試合への入り方を間違えなければ最終的に勝ちを拾える雰囲気がある。

また、日曜の湘南戦では、地力の違いを見せつける展開となった。マルのミドルはメインに少しだけ用意されたアウェイ自由座席からはその凄さが分からなかった。しかしTVであのブレ具合を見ると、あの日はアウェイゴール裏立見が特等席だったということを強く思い知らされた。マルのパンチ力は知っていたが、豪快ミドルとなるとこの日以来となるのだろうか?A代表もなんて噂を聞くと、感慨深いを通り越してもう感情を適切に言い表す言葉がない...

そしてチームとしても好パフォーマンスを披露。TV解説ではバルサっぽいとかいう言葉もあったが、もっとバルサっぽいチームは昨年の育成カテゴリにありましたよと言ってみたり...まあバルサっぽいかどうかはともかく、マルチネスを中心としたゲームの組み立ては純粋に観ていて面白い。サッカーやセレッソに対する知識がほとんどない連れ添いが面白かったというくらいなので、間違いはないのだろう。

ACLへの出場は運による部分も多いが、最終節をきっちり勝利で終わることができれば、ひとつステップを上がれるような気がしてくる。フロントも躍進後のジンクスを意識したのか、報道を見る限りではプレーヤーズ・ファーストで動いているように見えるのは好印象。戦力補強も大事だが、今を頑張っている選手を大事にするのが中長期的には一番大切なことだと思う。


U-18はJユースのグループリーグを突破も、楽ではない戦いが続いているようだ。「ようだ」というのは、高円宮杯の広島戦以降の試合を見ていないため。グループ突破には組分けの運不運もあるが、近年は突破が当然となりつつあるのは、それだけ地力がついているということだと思うし、そういう意味では紆余曲折を経ながらも前へと進んでいるということなのかなと思う。

ただ、育成組織に対する注目が高くなかった頃は、ひとつひとつの試合に臨むテンションと結果に対する感情の起伏が良い意味で大きかったようにも思う。今ほど強くなかったから負け試合や勿体ないドローも多かったが、いずれも結果に対する喜びや悔しさといった感情が強烈に伝わってくる好チームだった。当時は「グループリーグ突破」が大きな目標となり、そこに向けて一戦一戦の重みが違っていた。今はグループはさほど苦もなく突破できるが、チームとして個人としての目標はどこにあるのだろう?

チームとしての一体感を持って、トーナメントでは全てを出し切ってほしい。そのために、アウェーの広島戦に向けて良いグループを、スタッフと選手達が一体となって作り上げていってほしい。個人的に、今年のU-18の試合はもう観る機会がないかもしれない...だからこそ、全てを出し切った良い試合だったという話を、この試合に来なかったなんてありえへんというような話を人伝に聞きたい。現地で観たかったと羨んでしまうようなサッカーを繰り広げてほしい。そして長居の地で多くのサポーターにその勇姿を観せることができれば、これに勝る喜びはない。選手達には、ただ全てを出し切れるように全力で挑んでほしいと思う。


津守U-15は、堺NTCヴィッセルとの高円宮杯関西大会の試合を観戦。全国への切符を賭けたこの試合では残念ながら敗戦となったが、敗者復活トーナメントを勝ち上がって第5代表の枠を勝ち取った。ヴィッセルとの一戦では、相手の圧力に押し切られるように立ち上がりに失点。その後は持ち直したものの誤審に近い判定で1人少なくなり0-2での敗戦となった。メンタルが戦術を凌駕しているかのようなヴィッセルに対して、津守U-15はチームバランスを気にしたのか、どこかぎこちない時間帯が長かったようにも感じられた。今年から一発勝負のトーナメント制に移行したU-15高円宮杯。初戦の相手となったマリノス追浜には、夏のクラ選での因縁がある。U-18と全く同じとなってしまうが、この1試合に完全燃焼できるように残された時間を大事に準備を進めていってほしい。


西U-15については、今年は公式戦をひとつも観ることができなかった...結果が出なかったことについては残念で仕方ないし、観ることすら叶わなかったことには後悔の念すらある。ただ、U-15のヴィッセル戦と同じ日にトレーニングマッチを観て、昨年の蓄積が継承されていることに安堵感のようなものと喜びを感じた。このボールの動かし方は以前に観たことがある。楔を受けてワイドに、そしてSBがオーバーしてといった一連の動きが、人とボールが有機的に動く光景が、昨年の徳島での記憶を思い起こさせる。現場の方々や選手達にとっては単なるトレーニングマッチだったのかもしれないが、昨年観てしまった夢がまだセレッソの育成組織で息づいていることが、個人的には嬉しくて仕方なかった。


セレッソを、そして育成組織を観ていると、1年というサイクルはとてつもなく速く過ぎ去っていく。そのせいか、1年の最後は色んな記憶や光景が凝縮され、様々な記憶でいっぱいになる。全てがハッピーエンドというのは難しいかもしれないが、いずれのカテゴリーにおいても最善を尽くした、全てを出し切ったと言えるような1年の締めくくりとなることを願っています。